イチゼロの世界
白か黒か?
元エンジニアのしんちゃんはいつも答えを求めていた。
相手に質問して曖昧な答えにはすかさず
「結局、どういう事ですか?」
ハッキリと問う。
食事では美味いか不味いか。
時間では早いか遅いか。
対人関係では好きか嫌いか。
そして仕事では出来るか出来ないか。
コンピューターのような男だ。
時々、周りから煙たがられて、それでも引き下がらない彼の真っ直ぐさが個人的にはユニークに見えて好きだった。
とある半導体プロセス検証で彼は白黒つけられない難問にぶち当たっていた。
彼の様子がおかしくてどうしたのか尋ねたところ、後頭部を引っ張られてるかのような痛みがあると言っていた。
頭の中に小人(コビト)がいて、後頭部で神経を引っ張っていると言っていた。
初めは仕事中だけだった痛みが、帰宅後も継続するようになって病院に行ったが、幸いストレスの影響で病気ではないと診断されていた。
彼は潔くエンジニアから足を洗った。
その後、8割女性の職場へ転職し、3年で彼は変わった。
相手に合わせるスキルを身につけたのだった。
そして間も無く、、、年上の彼女が出来た。
頑なに無駄をしない彼が、毎週末50キロ離れた彼女の家に通って3年が経っている。
人は変われるということを彼から学んだ気がする。